ピアノ自宅練習”親御さんとやる場合”②

以前のブログから少し間が空いてしまいましたが、今回は「親御さんがお子さんの耳となり脳となってしまっていないか」ということについてのお話です。

例えば、よく宿題に出す項目なのですが「○小節目〜○小節目:凸凹みつけ」という課題を出したとしましょう。これをお子さんがご自宅のピアノで練習していたとして、提示されているフレーズを弾いた時、ある1音を飛び出た音で弾いていたらどうしますか?「あっ!そこ!飛び出てるよ!」と、即座に声をかけていないでしょうか。耳が痛い方多いと思います^^;………いえいえ、それを自分で見つけるのが宿題です。「先生そんなこと言ったって、声をかけないと、飛び出してる事にも気づかずそのままスルーして次に行っちゃうんです」……はい、仕方ないですね、それは本人が気づかなかったのだからそのまま次へ行ってもらいましょう。そうなれば、また私は同じ宿題を出すまでです。何度も自分で聞いて、気づくまでやってもらいたいです。親御さんに言われて直したところで、それは自分の耳が、脳が気づかなければまた別の場所で同じことの繰り返しです。或いは、私たちが聴いたら硬くキツく聴こえる音でも、本人は自分の出している音がキツイとは思えないのかもしれません。それもやはり、鍍金を塗るようにただ表面的に親御さんの耳でそれらしい音を真似させるのではなく、レッスンの中でいちいちお手本の音を聴いて、先生の体を見て感じて、時間をかけて自分自身で体得していくより他ありません。

音楽は留まらず常に流れていますから、立ち止まって考えている隙はありません。多くの場合は、気づいたらもうその音は過ぎ去ってしまっていて「あっ、聴くの忘れてた」となりがちです。そのように常にどんどん流れていく中で、一瞬一瞬を逃さず、お子さん達に使っていただきたい思考は、例えば”フレーズというものはなだらかで滑らでなければならない”という種類の思考です。ですが、日々親御さんがお隣に座って逐一注意されているお子さんが考えていることは、大抵の場合、ちゃんと弾かないとまたお母さんから注意される→注意されると面倒くさい事になる→面倒くさい事になるのは嫌だから直す”という、音楽とは少し関係のない発想の”反射的思考”です。時に、私もレッスンの中で「今度聴き逃したら反復練習10回だよー」と、ゲーム感覚で言う時もありますが、これが不思議ですね…先生から言われるのと親御さんから言われるのとでは、どうしてこうもモチベーションが違うのでしょうか。レッスンの中では、お子さん達が張り巡らしているアンテナも全く違うように思います。私も経験がありますが><一般的には、親御さんからの注意は士気がダダ下がりになりますよね(◞‸◟)……この、士気ダダ下りになってまでもやらせてしまう練習というのが、どれだけ芸術から遠ざけていることか……。

クラッシック音楽には楽譜があり、ある種”型”のようなものがあるので、「教え込めばできるようになる」…と思われがちですが、ピアノの本質は芸術の心そのものです。表面的な事を伝えてハイおしまいというわけにはいかず、むしろその奥に潜んでいる感覚的な世界を広げてあげたいのです。親御さんに本当にサポートしていただきたいことは、明日のレッスンのために大人の脳や耳で凸凹をなおしてくることではなく、将来、ワクワクするような音楽を奏でられるような、芸術の心そのものを育んでいただきたいです。ワクワクするような演奏ができる人になるには、音楽を聴いてワクワクできるお子さんを育てなければなりません。音楽を聴いてワクワクできるお子さんにするためには、ワクワクする体験を一回でも多くさせてあげなければなりません。

1+1=2ではない世界は、進度が上がるにつれて益々複雑になっていきます。いずれ来るその複雑な世界に、萎えずにワクワク心を寄せていけるよう、小さな頃から自らの耳と脳で、また自らの心で、自由に発想し表現する力をつけてあげたいと思っています。

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