ピアノ自宅練習・親御さんとやる場合①

お子さんがまだ小さい方や、お子さん自身の希望で親御さんが隣でサポートくださっているご家庭も多いと思います。その場合、親御さんは必ず笑顔で、どんな演奏にも心からの感動を示してあげていただきたいと思います。決して上から教えるような体制ではなく、一緒に勉強しているモチベーションを貫いて頂けると嬉しいです。万一、隣に座っただけで険悪なムードになるのでしたら、二人三脚練習はそろそろ卒業ではないでしょうか…。

勿論、親御さんが隣に座って全てサポート下さった場合、1人練習をするよりはずっと効率もいいですし、特に小さな頃は目を見張るような上達を見せるお子さんもいらっしゃいます。が、長い年月多くの方に関わらせて実感することは、はじめは上手くいっていた二人三脚練習も、ある年齢からはかえって伸び悩むケースを沢山みてきました。これは、喧嘩にならずとも…です。険悪なムードでの練習は前ブログでお話しした通りですが、練習時に良好に見える関係だったとしても伸び悩みを見せるのは一体どうしてでしょうか……その事については、私自身の経験も踏まえ、これまで沢山の親子さんに関わらせていただきながら、かなりの時間を割いて慎重に見極めてきましたが、伸び悩む理由には、次の3つの要因があるように思います。

まず一つ目は、伸びるために大切な”教えられる側の謙虚さ”が、親子の関係性では年齢と共に築きにくくなっていく為。

二つ目は、長年親御さんがお子さんの耳となり脳みそとなってしまい、能動的で自由な創意工夫の資質を育みにくくなる為。

三つ目は、お子さん達は、先生であれ親御さんであれ、一番長い時間見聞きしている人のテクニックや世界観を驚くほどそっくりそのまま感じ取り体得していく為。

以上この三つのことは、簡単な文章では説明しきれないので、順をおって是非一つずつお話しさせていただきたいと思います。

まず今回は「教えられる側の謙虚さ」についてお話ししましょう。

「謙虚さ」については、教えられる側の…というよりも、ピアノを弾いている時は常に謙虚な心でなくてはなりません。残念ながら、親子練習には揉め事もつきものかと思います><。ピアノを弾く行為自体が”芸術”ですから、どんな心持ちでそれを弾いているか、どのフレーズの時に心はどんな風に動いているのか…演奏中の心の動きは何より大切です。もし小言を言われて(小言と思っている…)イライラしながら音を出したとしても、そのモチベーションで何百万回弾いたとしても、一つも、一切、1音も出していないのと同じくらい意味のない事のように思います。それどころか、少し怖い言い方をしてしまうと、イライラ練習は何の役にも立たたないだけならまだしも、ピアノを弾く=弾いただけで負の感情が湧き上がる…という心の訓練をせっせと積み重ねているようなものです。

ピアノの本番中の心理状態というものは本当に繊細で、本番だけ伸び伸び弾こうと思ってもそれは到底無理な話です。もし形だけなんとなく出来たように見えても限界があり、本番での高揚感、本番中の思考の使い方など、日頃から感情の訓練が出来ていてこそなのです。緊張の中でアレコレ自分の心をコントロールすることはほぼ不可能ですから、日頃から、ピアノを弾いている時の”高揚感”、この箇所を弾く時はこっちの脳が動く…など、日常練習の中で感情や思考の使い方を擦り込んでいく必要があるのです。私が宿題ノートに、ブツブツに区切って弾くことや1小節おきに弾いたり、フレーズの後ろまで弾かず途中で伸ばしたり、1音ずつ増やしたり戻ったり‥と書いているのも、緊張しても無意識に思考が働くための訓練です。毎日ピアノを弾いている時の精神状態や思考の働き方、思考の回路は癖のようなものです。見方を変えれば、日々の練習は子供達の心の中に無意識に”癖”を積み上げていっているのです。その事をよく理解していただき、お子さんがどんな心で毎日ピアノに向かえているか、慎重に、暖かく見守っていただけたらと思います。

次のブログでは、伸び悩む要因の、残りの二つについてお話ししたいと思います。長文、いつもお付き合い頂きありがとうございます。

コメント