音読みについて②年中さん〜小学校低学年頃まで

音楽は時間芸術です。留まらず流れています。単音のその一つの音さえも先に進もうとするエネルギーがあり表情があります。小さな頃からこの感覚を自然な形で体に染み込ませていくために、私の教室ではカードやワークのような流れの止まったもので音読みのスキルを積むのでなく、あえて流れがあり表情のある”楽譜”を読むことで「読譜」と「西洋音楽のフレーズ感」の両方を同時進行で育てていくことを大切にしています。

ドレミを覚えた年中さんから〜小学校低学年までの方は、音読みのスキルを積むために写真のような教材を使用しています。とにかくスラスラ弾けることに喜びを感じていけるよう、本人のレベルより少し簡単なものからスタートしていきます。一曲ずつとても緩やかな進度で進んでいき、同じレベルの曲が何曲も続いているので無理なく読譜力を定着させていけます。皆さんこの他に、表現を学ぶための曲集、ポリフォニーのためのテキスト、楽曲の中でセオリーを学んでいくテキストなど常時3〜4冊のテキストを併用しています。

音読みのスキルアップをしていく上で、私自身の中で次の二つのことを課題として掲げています。

とにかく1音でも多く読む。とにかく1音でも多く音符の玉を読み、同時にすぐさま指に直結していけるよう回路をつなぐことを目指しています。

スラスラ弾けたら合格。万一、音やリズムを間違えて弾いてきたとしても、その場でアドバイスして直す事ができればOK。「うたとピアノの絵本」は私と楽しく連弾で通して弾けたら合格としています。演奏表現が多少乏しくてもそれは別テキストで補うとして、これらのテキストに限っては読むことと指を連動させることを目的としているので、とにかく読んで→弾く、読んで→弾くを、どんどんこなしていただいています。またこの課題、はじめ2年は音符の玉を全て五線譜に書いてきていただいています。4歳さんは白丸のみからスタート。その後は皆さんの力量に合わせた写譜をしてきてくれています(ここまでに丸を書くことができてト音記号ド〜ソまで読めるようになっている前提です)ですからはじめ2年は読んで弾くだけでなく、読んで→書いて→弾く、読んで→書いて→弾くを、どんどんじゃんじゃんこなしています。…………と、このようなテキストの使い方をしていると呉暁先生がお知りになったら嘆かれるでしょうか(;´д`) ↑どんどんじゃんじゃんとか書いたから(汗)信じてもらえないかもしれませんが、先生が真心込めておつくりになった”うたとピアノの絵本”は、子供たち皆本当に大好きで、愛らしい歌詞と暖かな挿絵に日々癒され子供たちの背中を押してくださっています。中にはいつもお膝の上で広げて絵本のように読んでくれてる子もいて、その子の本はボロボロです^^;生徒の皆さんとページめくる度「次のページはなんだろぉねぇ〜」と、次が何か知っている私でさえ、毎回わくわくヒミツの引き出しを開ける心持ちでページをめくっています。みんなこのテキストが大好きで一冊あっという間に終わってしまいます><

古典の伴奏形をしっかり身につける。二つ目の課題は、全ての作品の基本ともなる”古典の伴奏形”を小さな頃から身につけることを目指します。

特にツェルニーでは(こどものチェルニー1.2・やさしい20の練習曲)基本形の和音からはじまり、カデンツ、カデンツの転回形和音「Ⅰ-Ⅴ-Ⅰ」→「Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ」→「Ⅰ第一転回形-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ」と、古典の伴奏スキルを着実に身につけていただきたいです。古典の伴奏形の手の形やバスのラインをこの時期に身体に染み込ませておくことは、次の課程のブルグミュラーやソナチネで、心も脳も自由に開放され生き生きとした演奏をするために必要不可欠だと思います。たまに、ブルグミュラーやソナチネの譜読みに何週もかかったり…左手に転回形和音が出てくるたびに演奏が止まってしまったり…という方をお見かけします。スラスラ弾けるようになるまでに時間がかかってしまうのは本当に可哀想ですね。何週もかけてせっかく通して弾けるようになったと思ったら、そこそこ弾いて「ハイ!合格」となってしまって…。本当はそこから先こそがと〜っても楽しくなるのにね。

次にご紹介するのは、ある著名なピアニスト先生の著書の中の一文です。「読譜力は、初めて見る譜面とその音符の数に比例する。つまり、はじめて見る譜面をどれだけ多く読んだか…はじめて見る音符の数が多ければ多いほど、読譜力は身につく。」このことはヨーロッパの多くのピアニスト先生方も仰ってる事で、単に”読譜力”ということだけに着目するならば、カードを毎日繰り返し読んでその後それがスピードアップしていったとしても、すでに読んだことのあるカードを以後何回読んでも”譜読みの力”そのものは上達していかないのだそうです。脳トレ的なピアノが流行っている昨今、私がこのような事を書くことでいろいろ誤解を招いてしまってもいけませんので、次のブログではもう少し詳しく踏み込んだお話をさせていただきたいと思います。

いつも、長々とややこしいブログを最後までお読みくださり本当にありがとうございます。是非この次もお読みくださると嬉しいです。

コメント