音符を読むこと……「絵本のその先にあるもの」②

小さな子供たちの心の中には、子供たちにしか開けられない扉があって、その扉の向こうには、大人には見えないもの、大人には聴こえない音、大人には触ることのできないフワフワでツルツルでザラザラでピカピカなものが隠されてる秘密基地のような場所があると思います。小さな子供たちは、毎日毎日その心の中の秘密基地の扉を開けては、フワフワや、ツルツルや、ザラザラや、ピカピカを、触ったり眺めたり聴いたりしながら、心のリズムを刻んで、自分の心を色んな形に変えて遊んでいるのだと思います。 

 私は中学生の頃、楽譜を読むたび「このワクワクは本を読む時の気持ちと似ているなぁ〜」と思っていました。紙の上に書いてある音を、自分の身体で再現するたびに心が色々な形になって、ウキウキわくわく、ザラザラ、しっとり…心が自由自在に変幻します。心と音符が結びつくことがわかってからは、奏でることがとにかく楽しくなり、その奥に何が隠れているのか掘り下げるうちに、思いもしなかった感情が見つかったりして”へぇ〜自分の中にもこんな感情が存在してたんだなぁ〜”と、またより一層感動するのです。

小さな子供たちにとっては音符読みはとても高いハードルです。いつか楽譜をスラスラ読めるようになるために、毎日猛スピードで音符カードを読んだり、音符ドリルを何枚もやったり、何度もタイムを測ったりしているうちに、もしかすると、いつしか心はリズムを刻むことをやめて、心の形の変え方もわからなくなってしまって、秘密基地の扉がどこにあったのかも忘れていってしまうとしたら、それはすごく寂しいなぁ〜と思います。”楽譜”を読むことは秘密基地の入り口で、とてもとても楽しい事です。そのずっと手前の”音符”を読む事も、楽しくできたらいいのになぁ〜と思います。秘密基地を覗きながら、ワクワクどきどき心踊らせ、芸術としての音符をスラスラ読める方法をこれからも追い求めて行きたいです。そうした先にある演奏は、流れるリズムがとにかく心地良くて、説得力があり、何より弾いてる自分が本当に楽しいから。そうしていつかその子たちが、ベートーヴェンやシューマンやブラームスを読むようになった時、その音楽がどんなに素晴らしいか、一緒に何時間も語り合いたいです。

世の中に、お買い物しててもついお歌を口ずさんでしまうようなママさんや、歩いていてもついお歌を口ずさんでしまうような子供たちが増えてくれますように♪。子供たちの、自由で、時に横着なくらい縦横無尽なエネルギーは、本当にほんとうに魅力的なのです。

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