夏休み、マスターコースの皆さんは…

長期休みは、マスターコースの方々にとって多くの学びの機会があります。コンクール参加や、ピアニスト先生のマスターレッスン受講・サマーセミナー受講など、私もその準備でなかなかお休みがいただけず、ブログ更新もできずにいました。今日はそんなマスターコースの方達の活動の様子です。

夏休みに入ってから続いている生徒さん達の本番、その中の幾つかは私も会場で聴かせていただくことができました。ステージでの演奏は、レッスン室の中で聴いている演奏とは違い”音”というものをどんな風に捉えているかが手に取るようにわかります。音のイメージをきちんと持っている人の演奏は、とても立体的に聴こえます。また、緊張や慣れない楽器・空間のせいで立ち上がりこそ平面的であっても、弾き進めるうちにどんどん立体的にしていける人もいます。一方、手で弾くだけで精一杯……最後まで”音”についてはあまり考えることができない人などなど、きっと相当な練習を積まれたことでしょうに、そもそもの練習の中に大切なものを見落としてしまってる方々もいらっしゃいます。こうして出場者の方々の演奏を並べて聴いてみると、勉強の仕方も実に色々だなぁと実感します。

教室の生徒さん達の演奏は、どの方も日頃の練習の質がうかがえる素晴らしい演奏でした。立ち会うことができなかった本番も皆さんしっかりと力を出すことが出来たようで、全員が着実に次に繋げることができました。大切な舞台で本来の力が出せることは本当に素晴らしい事です。全ては、日頃の練習の”質”…練習の仕方を知っているかどうか…ですね。小学生の方達もひとステージ毎に本当に逞しく成長され、数ヶ月前の演奏がどんどん更新されていく姿は目を見張ります。ただし、エントリー経験の浅い方達にとって”コンクール”とは、チャレンジの仕方によっては気づかないうちに心が疲弊してしまったり、或いは、取り組み方次第ではそのような危険を孕んだコンクールもあったりと、親御さんを含んだ私たち周囲の大人の心構えが真から問われるものでもあるのです。これは、お子さん達が生涯をかけて真剣に音楽をやっていくために本当に大切なことなので、マスターコースの、特に小さなお子さんの親御さんとはできるだけ多くの会話の機会を持たせて頂くよう心がけています。いつの時も、とにかく楽しく、そして深く作品に向きあえる学びができるといいですね。

そして一方、現在セミナー真っ最中で正に毎日冷や汗をかきながら(ノ_<)脳みそ総動員で必死に挑んでいる方もいらっしゃいます。百合子先生の携帯に時々、「ヘルプ!!」のメールが入ってくるようですが(^^;;、とにかく、考えて考えて考え抜いてください。日本の音大・芸大は、いざ入ったら後は楽をしようと思えば自分でいくらでも楽ができてしまいます。少し横着な言い方をすれば、大して考えなくても、言われた通り”手”だけしっかり動かしていれば何とかなる…。音楽に限らず、その受身的な学びにどっぷり慣れてしまっているのが、日本全体の学生の熱量ではないでしょうか。が、もっともっと広い世界に出たらそういう訳にはいかない。とにかく深いところまでモノを考えていない人はコテンパンに打ちのめされます。主体性に欠けた演奏や、考えたフリ…をしているだけの演奏もダメ。自分の考えが尽きるまでトコトン考えないと、全て見透かされ、次々課題を突きつけられます。決して日本の大学のように放っておいてはくれないのです。音楽はコミュニケーションですから、偉大な先人達が遺してくれた作品の素晴らしさを、本番でしっかり伝えることは必須です。が、それだけでなくそこに向かうまでの時間で、皆さんが一体何を観て、何を想い、何を考えるのか…。是非、思慮深い芸術の時間を見出す方法を学びとって欲しいです。ともすると、「芸術だから全ては”感覚”・全ては”感性”」と捉えられがちですが、いえいえ、それも全ては考えるからこそ生まれるのです。日頃、何を観聴きしているか…。それに対して何を想って、何を考えているか…。その積み重ねの日常があってこそ感性が研ぎ澄まされていくし、その積み重ねの日常があってこそアイディアが湧き起こる脳や心を手に入れられるのです。

音楽は楽しいですね。でも学べば学ぶほど苦しくもありますね。特に、苦しい時の練習は暗い暗いトンネルに入ってしまった様ですよね。もし苦しさだけがどんどん募っていくようなら、もしかしたらそれは何かしら違う方向へ行きかけているかもしれません。そんな時は遠慮せずすぐに教えてくださいね。ゆっくりお茶でも飲みながら、一緒に沢山芸術の話をしましょうね。

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