練習:ちびっ子編

教室いっぱいに流れるオーケストラ曲に合わせて、一生懸命に指揮棒を振ったり、一生懸命太鼓のバチを振り下ろすちびっ子たちを見ながら、自分も一緒にその曲を聴いているといつもいつも思います。”もう何十回、何百回も聴いている作品なのに、こんなにも心が躍る理由はなんだろう”と。そしてその度に、”この子達が大きくなった時、ショパンを弾いて、ブラームスを弾いて、言葉に置き換えることのできない程のワクワクを、どうしたら感じてもらえるだろう。感じてもらうために、今この時にできることはなんだろう”と思います。

それを考えた時、いつも行き着く答えは二つ。一つは”好き”。そしてもう一つは”継続”。ただただこの事に尽きると、私の想いはいつもここへ行き着くのです。

そんな中、”好き”について、とても多くの親御さんからご相談を受けます。「口では好き!と言ってるけれど、自分からやろうとしないなんて、本当は好きじゃないのでは?」……*お絵描きや折り紙は、放っておいても自分からやっている。*テレビの歌や幼稚園の歌は言われなくても弾いている。これらは自分からやろうとするのに、どうして教室の曲は言われないとやらないの?

これは、本当にほぼ全ての親御さんが、一度ならずとも何度も疑問に感じることだと思います。実際、私自身も娘達が小さかった頃は何度思ったことか・・・。

ズバリそれは、上にあるような事柄は気軽に取り組めるから。心の赴くまま、自分の好きなように向き合って、上手くなってもいいし、上手くならなくてもいい。結果など求められないから自分の中のハードルは低くても大丈夫。だから、いちいち心を”よっこらしょ!”と起こさなくても、気楽にすぐに向き合えるのです。一方決められたピアノ練習は、ある程度上達も求められているので、”感性脳”だけでなく、大いに”理論脳”も使わなくてはなりません。更に両手で弾くとなると、どんなに簡単な曲でも脳はかなり複雑な仕事をしていることになります。親御さんからみたら簡単そうでも、小さな子供の脳にしてみたら、易々とピアノに向かえない本当に難しい事を強いられているのです。まずは、私たち大人はその事を十分に理解してあげなくてはいけないと思います。

ここでちょっと、お子さんがピアノ練習は面倒だ…と思うレベルを、私も自分に置き換えて考えてみました。

私は庭に出て土と触れ合うのが好きです。が、この時期は草との闘いで、抜いても抜いてもエンドレスに生えるので、毎年の事ながら少々嫌になります。3日サボると目も当てられない状態になるので、本来ならサボるわけにはいかないのですが、暑さも日焼けもイヤですから、となると6時前には庭に出なくてはならなくて、毎日毎日ベットの中で闘っています。いざ庭に出て土に触れれば楽しいですし、お庭が綺麗になるのは何より嬉しいのに、3日に一回は「お花さん達、ごめんなさい!!」と言って、布団をかぶって、また夢の続きを見ています……(≧∇≦)案の定お庭は荒れていきます><毎度毎度、「楽しいとわかっていてどうして出来ないんだろう」と思います。

皆さんも、”本当は毎日やった方が良いこと”または、”毎日やらなければならないこと”だけど、なかなか重い腰をあげられないことを見つけて、お子さんの気持ちになってみてはいかがでしょうか。

ですから、たとえ促されてからだとしても、お子さんがピアノ練習が出来た日は、是非心の底から誉めてあげてほしいと思います。「今日も素敵なピアノを聴かせてくれてありがとうね」と、何か具体的な言葉をかけてあけてあげてほしいと思います。いつしかお子さんの中でそれが当たり前にできる日が来たとしても、親御さんの中では決して当たり前にならず、お子さんがピアノに向かうことがどんなにエネルギーのいる事かを、忘れる事なく、いつも理解してあげていただきたいと思います。

そして更には、たとえ短い時間でもいいので、音楽を流して親御さんも一緒に歌ったり、踊ったり、リズムを刻んだりして、楽しんで頂けたら嬉しいです。お子さんより誰より大きな口を開けてお母様が率先してお歌を歌ったり…。(昔、私は娘達と一緒に歌を歌っていると、ついつい自分が一番大きな声になってしまって><娘達からよく、赤いマジックで✖️と書いたマスクをつけられていました^^;;) 或いは、実際に音楽に参加されなくても、お子さんが今やっている曲の題名などについて、ネットや本で調べて興味を広げたり、曲に出てくる景色を実際に眺めに行ったり…、そんな日常こそが、お子さんの好奇心を育み、”好き”や”継続”へと導いていくのだと実感しています。きっとそのような時間の共有は、お子さんだけでなく、親御さんにとっても本当に楽しく、有意義で尊い時間になることでしょう。将来お子さんのピアノが、何かしらの形で、ご家族皆さんの興味や喜びに繋がっていってくださったら、本当に本当に嬉しいです。

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