音読みについて①芽吹の導入期

今年も庭のモッコウバラが咲き始めました。モッコウバラが咲き始めると、あ〜新年度だなぁ〜と思います。教室の生徒さん達も数名の方が新しい環境へと進まれ、少しの不安と沢山の期待を胸に新しい門をくぐっていることと思います。皆んな、夢に向かって一層羽ばたいていけますように♪

さて今回は、卒業していった生徒さん達=新米先生方のために”音読み”について記したいと思います。”ピアノが脳に良い”とクローズアップされているこの時代、芸術に携わる者として日々感じている事、実際に私が実践している事など、数回に分けて書きとめていきたいと思います。まず1回目は、最もお悩み相談の多い導入期の音読みについてです。ここで言う導入期とは、実際にピアノを弾きはじめる4歳(年中さん)くらいの方を対象としています。それ以前の、音符を弾く前段階のいわゆる”プレピアノ”さんではなく、いよいよピアノでメロディーを弾いていく段階のお子さんを対象としていると思ってくださいませm(_ _)m。ご興味ございます方は最後までお付き合いくださったら嬉しいです。

導入期どんな時間を過ごしていますか  私自身、ここ数年の間、2歳から〜G大受験〜音楽を仕事にしていった方達までの長い年月を眺めてみて、導入期のお子さんが”単音読み”のためにどのくらいエネルギーを注ぐのか、指導者が注がせるのか、この匙加減が、その先の演奏力に大きな影響を及ぼすことがわかってきました。それは愛好家の皆さんも同じで、ボタンを押してるだけのような演奏ではなく、弾いてる本人がワクワクするような豊かな演奏をする為に、導入期に何をしてあげられるのか、いつもそのことを深く考えています。

音楽は時間芸術です。留まらず流れています。音楽の鼓動が波うつような、”時間芸術のためのアンテナ”の感度をあげるには、小さな頃の、流れのあるワクワクするような音楽体験が何より大切です。が、実際は、楽器演奏をすることもままならないこの時期、流れある音楽より、つい、カードやワーク、知育的な作業、または芸術とはかけ離れたテクニックのためのドリルなどに沢山のエネルギーを費やしてしまっている…ということはないでしょうか。勿論、ピアノが上手く弾けるようになるために指先の感度をあげることは大切ですし、楽譜を読む入口として”単音”を読めるようカードや教具を使うことは有効的です。また、将来”手”という道具を正しく使うために、小さな頃から理想的なテクニックをすり込んでいくことはとても大切ですが、それらは全て、あくまでも芸術をするための入り口であって、芸術そのものではありません。大人は、この先それが何の役に立つのか想像できますが、来る日も来る日も音の出ない鍵盤の上で手首を延々と上げ下げするだけの練習をしているとしたら、果たして子供たちは、その時間の中から本物の音楽を見つけていくことができるのでしょうか。全ては適期というものがあり、ほとばしる芸術的エネルギーというものは、小さければ小さいほどその熱量は多い事を、私たち大人は十分理解していなければならないと思います。小さな頃しか覗くことができない、躍動的な芸術の世界を、あくまで生きた音楽を主体としながら、バランスを吟味しながらサブ教材を取り入れていきたいですね。

小さな子供は、映像を記憶することが得意です。何度も反復することで、カードに書いてある音符をスラスラ言うことは大人が思うより簡単です。ですが、その時に使っている脳というのは、音楽を聴いて美しいと感じる脳や、表現力豊かに演奏するための脳とは少し別の場所が動いています。その証拠に、お子さんによっては、カードはかなりのスピードで読めるのに、それが楽譜になった途端に読めなかったり、音を次々つなぎながら流れにのって読む事ができなかったりします。それは、カードを映像として読む事と、楽譜の中の音符を流れの中で読んでいく事とは、脳そのものの使い方が違うからです。

流れの中で生き生きとした演奏をするための脳は、日常生活の中だけでは生まれにくく、その時の脳はもっともっと複雑な回路をたどっています。ですから、カードを見てスラスラ音名を答えられるという種類の脳から→魅力的な演奏ができるようになる脳へは、そう易々と一足飛びで繋げてあげることは難しいのではないかと思います。

音を読むことと指が動くことはイコールではない。当たり前のことですが、子供達にとって、音が読めるようになったからといってそれがすぐ指に結びつくかというと、その回路を繋げることは大人が思うほど簡単ではありません。ではどうすればよいのでしょうか。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、だからこそ、ある程度”単音読み”ができるようになったら、比較的に早い段階で指を連動させる訓練をはじめる方が後々スムーズにいくように思います。“読む”と”弾く”の二つの回路を、全く別のものとして処理する癖がついてしまう前に、二つを繋ぎ合わせてしまうのです。そして更に、すぐに簡単な楽譜の流れの中で音符を読んで弾く事をしていって、読む→弾く→楽譜の流れの中で更に先を読む、という一連の流れを脳に印象づけてしまうのが肝心です。そこをスムーズに進めていかないと、子供達の脳は”読む”という分析の為の脳と→”指を動かす”という作業としての脳→”留まらず流れていく”という感覚的な脳を、全て分離して印象づけてしまって、完全に違う領域のものとして捉えてしまうようです。一旦そう記憶してしまった脳は、その後情報を塗り替えるのはなかなか難しく、脳は順を追って一つずつ順番に処理することになるので、そのようなお子さんがピアノを弾くと、なんだか流れの悪いトツトツとした演奏になってしまうのです。

私たちが目指さなくてはいけない事は「音符が読める」ことではなく「流れにのって楽器演奏ができる」という事です。くどいですが、カードやワーク、教具は、あくまで芸術のための入り口であって、芸術そのものではない事をしっかりと理解しなくてはなりません。せっかくピアノをやっているにも関わらず、わざわざドリル脳を育てるような事はせず、無限の可能性を秘めているお子さん達の脳を、ぜひ、主体的で能動的な創意工夫溢れる脳に育ててあげたいですね。フラッシュカードは音符を覚えさせるには楽ですが、使い方を間違えると創意工夫の芽をつみかねません。どんな導きをしている時もバランスを見極め、常に先の先まで見通して、子供達の体(心)の中の芸術的パルスが薄れていってしまわないよう、わくわくするような音楽体験を沢山させてあげたいものです。

難しい事を沢山書きましたが><、とにかく、子供達だけでなく親御さんも、そして先生自身も、何をしていてもいつも芸術のうねりの中で心がわくわく動いているか…これをバロメータに、皆んなで楽しく頑張っていけたらいいですね!

次回のブログは実践編です。^ ^世の中の新米先生達、笑顔で頑張って!!

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