ピアノ自宅練習・1人でやる場合

日頃から、ピアノ練習について沢山のご質問をいただきます。ご家庭での練習スタイルはお子さんの年齢や各ご家庭の親子関係によるところが大きく、決して一括りにはできないと思います。それを前提として皆さんにお願いしたいのは、どの体制だとしても、決して親御さんが”先生になってしまわない”ということです。

①まず親御さんが横につかない場合のサポートについて考えてみましょう。隣に座っただけでたちまち険悪なムードになるというご家庭は、横につくことは控えていただき、あくまで親御さんのサポートは椅子に座るまでの声掛けのみとしましょう。まだ字が読めないなど、年齢によっては横についてあげなければいけない方もあるかと思いますが、文字が読めるようになり、ノートの練習も一通りなぞれるのでしたら、極力自分の力で練習するよう頑張って頂きたいと思っています。よく、「ノートの課題を順にやってはいるけれど、内容は薄っぺら…音や手がどうなってるかなんて本人お構いなしで、ただ回数こなしてるだけなんです。それでもいいんでしょうか?」というご質問もいただきます。ハイ!全てすべてのみこんで、1〜2年生くらいまでは出来るだけ寛容にOK(^^;;としましょう。ただし、放任にはならないこと。ピアノ練習は、お子さんにとっては本当に面倒な作業。それを1人で頑張るのですから、大変な事をたった1人でやっている素晴らしさを認めてたくさん誉めてあげましょう。また、練習自体のサポートはされなくとも、親御さんにやっていただかなくてはならないことは沢山あります。今弾いている曲に出てくる風景や動物、お花?など、一緒に想像したり調べたり…歌や手拍子で合奏に参加されたり…。お子さんが少しでも興味を持ってピアノに迎えるための工夫は沢山していただきたいと思います。

ただ、皆さんご心配のとおり、勿論ずっと粗雑な練習のままでは上手くなれません。教室では先生のお手本などを聴けますし、乱暴な音を出していたら注意してもらえるので、先生の前ではいつもより質の高い音楽を奏でられているお子さんも多いと思います。が、ひとたび自宅に帰ればまた自己流。教室で体感した”音”や”フレーズのうねり”も日に日に薄れ、毎日”自己流音楽”を弾き続けていると、次第に耳や心の感性はそちらになびいていきます。流れが止まっていても汚い音が出ていても平気になっていきます。自宅でどんな練習が出来るか…というのは、「どこまでピアノが上手になれるか!」を決めるとても大切な要素。ヘンテコ練習をしてると、大変なことになりますよね!

そこで!!です。お子さん達が、数年後に内容の濃い練習ができるよう育ってくれるには、ズバリ次の二つの事が大切です。一つは「思慮深い子」。もう一つは「ピアノ大好きっ子」。

思慮深い子になってくれるためには、日常生活の中でとにかく何でも自分自身の手でやってもらうことです。お子さんのやる気、好奇心、挑戦する気持ちを絶対に奪わない事です。たとえ失敗しても、家庭の中ですからどれだけ失敗してもへっちゃらです。本来子供というものは、恐れも知らず無邪気に挑戦することしか知らないものなのです。もし失敗しても、出来るようになる為に色々な方法を試してみて「この方法は出来る」「この方法は出来ない」と学習していきます。将来的には、この”プログラミング的思考”がピアノの練習をする上で本当に大切になってくるのです。もし失敗した時に、何かマイナスの言葉(“そんなことしてたら本番間違えちゃうよ”など脅したり、キツイ言葉でなく柔らかい言葉だとしても、出来なかった事を印象付けてしまう様な言葉)をかけてしまうと、次第に難しいことは避けるようになり挑戦する勇気が減っていきます。そして最後には、難しいかもしれないと思っただけで面倒だと思うようになってしまいます。とは言え、子供はある意味とても臆病な側面も持っていますから、時には怖気付く事もあるでしょうね。そんな時は、何度失敗しても親御さんは動じず、心は100%お子さんへ寄せつつも、必要以上に多くの言葉をかけず、信じてただ黙って暖かく見守り続けてあげたら、そのうち安心して何でも挑戦してくれる子に育っていってくれると思います。思いもよらないちょっとした言葉掛け…自分でも気づいていない場合が多いですが、大好きな親御さんの発する言葉は全て右にも左にも響いてしまいます。特に、できなかった時のお子さんへの言葉選びは慎重にしたいものです。

もう一つの大切な事は「ピアノが大好き!」という気持ち。ピアノ練習に最も必要なのは”根気”とおっしゃる方もありますが、勿論根気は必要です。が、いくら根気よく積み重ねても演奏になかなか現れてこないケースも実に多いです。それは、ピアノは芸術で「心の表現」をしなくてはならないからです。コツコツ積み重ねる事はとても大切ですが、ピアノの場合ただ積み重ねただけの演奏はどこか感動的ではありません。お子さんによっては、それほど楽しいと思はなくとも持ち前の”根気良さ”で日々の練習を進めていける子もいらっしゃるかもしれません。ですがそのような心の積み重ねは、単に指を巧みに動かし沢山のボタンを器用に押せるようになっていくだけです。それとは真逆で、本来どちらかと言うと根気は無いはずなのに、好きなことに限っては根気よくいつまでもやれる…という事もありますよね。正にソレです。大好きな事は生き生きと取り組めますし、もっと先へ進めば、じっくり考え深く取り組める力をも生み出します。根気が背中を押してくれるだけの練習から一歩進んで、更にその先の”心からまたやりたい!”と思えるほどの「好き」を育ててあげることが、私たち大人が全力でやってあげなくてはならない最大のサポートだと思います。

小さなお子さんにとって”1人でピアノを練習する”と言う事はとてつもなく面倒臭いことです。送り迎えだけしたらすんなり1人練習ができるような、ピアノはそんな簡単なものではありません。沢山の「好き!」を育てるために、親御さんも一緒に連弾したり分担奏をしたり…楽器が弾けなければ隣で歌ってあげたり手拍子をしてあげたり踊ったり…。あくまで本人が集中した練習ができている時は声はかけず見守り、少しダレてきたなぁと思ったらドンドン音楽に参加して親御さんも楽しんでみてください。そして、お子さん達が楽曲に対して少しでも多くの興味を持てるよう、作品に出てくる事柄や風景など親子で一緒に調べたり、外へ出て写真を撮ったり、絵を描いたり、それをテキストに貼ったりしながら、今弾いている曲が大好き!になっていけるようなサポートを見つけていただきたいと思います。

次のブログでは”親御さんと一緒に練習する場合”を考えてみたいと思います♪

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