体幹と集中力

立て続けですが、昨日アップした”子供達の自由さ”とは別に、今日は、私が小さなお子さん達に対して常日頃感じている事を記しておこうと思います。それは、最近のお子さんはひと昔前のお子さんに比べ、体幹が少々弱いように思います。残念ながらこれは、閉じこもりがちにならざるを得なかったコロナ生活も大いに関係していると思います。

体幹とは、おへそから5センチくらい下の、背中に向かって奥の方の場所で、丹田とも言われています。体幹は、身体を支えたり動かしたり運動機能に関係するだけでなく、”内臓を正しい場所に収めておく”という大切な役割も担っています。また、体幹は健康面に関係するだけでなく、実は子供達の”集中力”にも大きな関わりがあるのです。

体幹をしっかり安定させる事で姿勢が良くなり呼吸もスムーズになります。正しく呼吸できていると酸素が体の隅々まで運ばれるので脳が活性化される…という具合です。集中力が増すと体の細かな部分にまで意識が届き、指の先の先までアンテナを張り巡らせる事ができるのです。学習塾の先生も、絵の先生も、お料理の先生も、各々その道のプロに尋ねると、極めるには体幹は必須!と皆さん仰るのです。なにも人生何かを極めないといけない訳ではないですが、そのくらい体幹は何をやるにも大切だという事です。ピアノにおいてもそれは同じ。豊かな音を出す為に、また、本番の集中力を高める事にもつながるとても重要な役割を担っているのです。

体幹は、遊びの中でも十分鍛える事ができます。ケンパの遊び、ジャングルジム、ぶらんこ、縄跳び…ボールを蹴ったり、キャッチボールも。また家庭の中では、ゲーム感覚で雑巾掛け競争をしたり、お相撲さんのポーズで座って(蹲踞の姿勢)誰が1番フラつかずにバランスを取れるか競争したり、そのまま2人向き合って、手で押し合いっこして押し相撲をしたり。お手玉や、紐で輪っかを作り床に並べてツイスターゲームをしたりと、楽しんでできる事は沢山あります。教室では、マスターコースの学生達のために月に一度ヨガの先生においでいただき、呼吸と体の関わりについてサポートいただいています。一般コースの方達も、小学校も後半になってくると、徐々に激しい曲も出てきます。そのような曲に取り組む時、体幹を使って座れない人は思い切り表現するに至らず、ダイナミクスに欠けた手先だけの演奏で終わってしまいがちです。そして、強い音の時は勿論、弱い音を出す時も、体幹をしっかり安定させて座る事ができると上半身の力を十分に抜く事ができるため、どんなに弱くても客席の後ろまで届く豊かでふくよかな音を出す事ができるのです。「上半身の力を抜こうねぇ」というと、大抵のお子さんはお腹までふにゃ〜っと抜けてしまいますが、それではかすれたり、芯のないただの弱い音で、ぜんぜん音楽ではなかったり……。

小学生以上の方で初めてレッスンにいらっしゃる方達は、「座る」ということについて再三アプローチさせていただきますが、外からおいでになる方は、ほぼ全ての方が体の芯を締めてしまっていて、ピアノを弾くという前提で座る事が出来ない方がほとんどです。そしてそれは、歌心がある方ほど固めているのです。そもそも弾くときに足はどこにあるのか、高音に行く時のお尻や腿のあたりはどんな風になってるのか、低音に行く時の股関節はどうなってるのか、腹筋は?、胸は?そしてその時の思考は……?(←実はコレが1番難しい><)。具体的な体のアプローチを始めると、まず何より体がうんと楽になります。と同時に音もグングン伸びやかになっていきます。闇雲に脱力脱力と言っても支えるものがなければ脱力は不可能で、本当の意味で脱力を手に入れるには、力を抜いた時の重心をどこに置くかをまず知る事が大切です。それが出来きてはじめてやっと、思考へのアプローチへと導くレッスンに繋げていけるのです。

小さな頃、大抵どこへいっても上手い!!と褒められていた子が、学年が進むに連れだんだんとそういう訳にはいかなくなってきているという方、いらっしゃるのではないでしょうか。中学生や受験の頃になって駆け込んでいらっしゃる方もありますが、できれば小さな頃から体のアプローチはしっかりしておきたいものです。体幹は家庭でも十分鍛えられます!遊びの中で出来ることは沢山あるので、できるだけ小さな頃から遊びの中で体幹を鍛え、重心を据えた座り方がいつの間にかできるようになるといいですね。ピアノの為だけでなく、生涯健康に暮らせるための大切なことでもあるのですから!

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